11月25日、政府はTPPこと環太平洋経済連携協定の合意を受けて、国内対策の政策大綱を発表しました。

これによると、製造業やアニメ、マンガなどの「クールジャパン」の更なる輸出拡大を仕掛けるとともに、農作物の輸入自由化によって大きな影響を被る農家保護策が打ち出されています。

TPPとは?

TPPとは、太平洋のまわりの各国により強固な経済の繋がりを生み出そうとする協定で、シンガポール・ブルネイ・チリ・ニュージーランドの4か国で2005年に発足しました。

2010年にアメリカ・オーストラリア・ペルー・ベトナムを加える協議が開始し、更にマレーシア・メキシコ・カナダ・日本が交渉に加わりました。

環太平洋、という言葉を使っているところから見ると、太平洋を囲むロシアや中国、フィリピンも参加しての経済相互自由化、という印象を持ちますが、これらの国に加盟する動きはありません。おとなり韓国も、TPPに関して静観を保っています。

2015年10月、甘利明経済産業大臣が「TPP合意」としてインタビューを受けているニュースをご覧になった方も多いでしょう。

上記12か国が5年半に及んだ閣僚交渉を締結させ、大筋合意と報じられました。今後は12か国間で関税撤廃(若しくは大幅な関税率削減)を進めていくことで、経済の流れを円滑化する目的があります。

関税とは?

関税とは、外国で生産された農作物などについて、日本で販売する際に課す税金のことです。

たとえばアメリカ国内では500円で販売している「牛肉のステーキ」があったとします。これを日本で販売する際は、300円の関税を加え、800円で消費者は購入をする、という構図になります(便宜上の数字です。関税は実際の税率と異なります)。

この関税を課すことで、日本で牛を育てている農家の商品が回避されることを避けます。

同じように日本で販売している自動車も、アメリカでは関税をかけて販売しています。(自動車各社の現地法人については考慮していません)。

この関税を撤廃して、流通を更に良くすることで、お互いに経済的な恩恵を受けましょう、という動きがTPPです。

TPPから農家を守る理由

TPPが本格運用されることで、日本の農家が多大な被害を受けるのではと言われています。

特にアメリカから輸入される格安な米や農作物は、消費者に喜ばれ、日本の土台とも言える第一次産業を停滞させるのでは、という危惧が叫ばれています。

政府はこの危惧に対し、国で保存する「備蓄米」には国内米を優先するなどの救済策を打ち出しています。この動きは今後、ほかの農作物にも広がっていくと思われます。

これからの動き

現在のTPPはあくまで「大筋合意」です。各国は今後、それぞれの国内議会でこの大筋合意の「承認」を目指していくことになります。規定である2年以内に承認手続きを終えられない場合でも、合計GDPの85%以上を占める6か国以上が合意すると正式に効力が発生します。

このTPPが本格稼働すると、世界のGDPの4割近くを占める自由貿易圏が誕生します。

農作物や製造業の自由化の後は?

専門家のなかには、「農作物の自由化が波に乗った後は、本丸である金融サービスの自由化が行われる」という意見を唱える方もいます。

次のURLは、1998年から2010年までのアメリカのGDP(国内総生産)における産業分野別内訳、つまり「アメリカではどのような仕事が多いか」を示すアメリカ商務省・経済分析局の報告です。http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/Economy_of_the_US/14.html

アメリカの産業のうち、今回TPPをめぐる議論にて恐れられている農業部門は全体の約1%。一方で「金融・保険・不動産・レンタルリース業」は全体の約20%と、大きな違いが見られます。

インターネットで調べてみると、アメリカの終身保険の解約返戻金は日本の返戻率の高い商品(約110-120%前後)を軽く凌駕し、商品によっては200%に達するものもあります。保険に加入する消費者とすれば歓迎すべき状況ですが、日本の保険会社は対応に苦慮することになりそうです。

農家の説得には「あの若きプリンス」

当然、TPP大筋合意には国内の農家から強い反対の声があがっています。

この農家は政権与党である自民党の支持母体ともなり、来年2016年に控えている参議院議員選挙にて重要ポイントとなることが自民党中枢から懸念されています。そのため、自民党は若きプリンスである小泉進次郎氏をTPP反対が根強い農家のまとめ役である「自民党農林部会長」に任命しました。

まとめ

このように、TPPを巡る交渉はいまだ大筋合意がまとまっただけの過渡期でありながら、世論を二分するなど強い影響力を有しています。

今後、各項目の関税をどうするか、という問題に落とし込んでいくなかで、更なる議論や紛糾は避けられないものと予想されています。我が国の貿易政策、農業政策が大きく変わる転換点。今後の流れをしっかりと注視していきたいものです。

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