事業者が銀行からお金を借りるにはどうしたらよいのでしょうか?

どういった書類を用意すればいいのか、どのような点に注意すればいいのかなどについて解説したいと思います。

事業者はそもそも銀行から借りることができるのか?

サラリーマンと違い、収入が不安定な事業者は、はたして銀行から借りることができるかについてお話しします。

結論から言いますと、ケースバイケースです。というのも収入面では不安定だが、開業してから10年以上経っているなど、収入以外の面で信頼を得る方法はいくらでもあります。

また、保証人が用意できる、できないでの違いもありますし、保証人以外での担保提供ができるのであれば、借入することができる確率は上がるでしょう。事業種目によることもあります。どこでも誰でもできる業種より、専門性が高い場合や収益性が高い事業の方が審査が有利になるのは言うまでもありません。

個人向けの各種銀行ローンについてはこちらをご覧ください
「銀行でお金を借りるならどこがいい?失敗しない銀行ローン」
「銀行でお金を借りる条件とは?」

事業者ローンの審査を通すには

事業者は一般のローンと違い、借り入れをする際の審査は少々厳しいと考えてください

景気は回復傾向にあるとはいえ、大企業以外の企業においては景気の回復がまだまだ実感できないような状態です。ちょっとしたきっかけで業績が悪化したり倒産してしまうような事業者も少なくはないと思います。

日銀の金融緩和によって市場にお金がダブついている状態ではあるのですが、債権の回収ができない可能性があるとなると銀行もそう簡単には貸してくれません。

そこで、ここでは審査が通りやすくなるためにどのようなことをしておけばいいのかという点についてご紹介します。

現実味のある事業計画の策定

現実味のある事業計画の策定と、全く現実離れしている事業計画の策定では、どちらが有利でしょうか。

当たり前ですが、現実味のある事業計画の方が、銀行の心証はいいでしょう。もちろん銀行によっては「絵」をもっと書くように暗に言ってくる場合もありますが、実現不可能な数値を書いても意味がありません。

また、事業計画を策定した後に大事なことは、それを後から検証することです。検証することで、その事業計画が無謀だったのか、それとももっと強気な事業計画を立てることができたのか、判明します。どちらにせよ安易な事業計画は策定せず、よく考えてから作るべきでしょう。

資金用途を明確にする

資金使途とは、銀行から借り入れした資金を何に使うかということですが、設備資金ならまだ分かりやすいのです。

というのも、「この設備がほしいからこれだけ貸してほしい」というと、具体的なのですが、問題は、運転資金です。運転資金は、資金使途がはっきりしないことが多く、また、一度借りてしまうと、何にでも使えるように思ってしまい、つい無駄遣いをすることが多々あります。

それではせっかく借りてもすぐに資金が底をついてしまい、再び借り増しするような最悪な循環に陥る可能性があります。

それを防ぐためにも、運転資金を借りるのであれば、その内訳を明確にしておくべきでしょう。例えば、給料200万、取引業者への未払金300万など内訳を作成し、それだけで終わらず、今後この借り入れをどのように返済していくかの計画も同時に策定していくべきでしょう。

税金の支払いは確実にする

税金の支払いですが、こちらを滞納していると審査が不利になります。理由は簡単です。万が一、融資した事業者が倒産した場合、真っ先に資金が回収されるのは税金からです。

その後、従業員への給料、最後に銀行の借入金などに当てられるからです。

このようなことから、税金を滞納している企業や事業者にお金を貸すことは銀行側からすると非常に危険なのです。もし支払うことが困難であれば、例えば税金の場合、まずは税務署に相談することが大切です。できるかどうかは断言できませんが、たいていは分納をすることを税務署側から提案されます

一括で税金を払うことが理想ですし、たとえ分納したとしても、本来期日までに支払う税金を期日後に支払うと、延滞金がつくことになります。

これこそ本当に無駄な出費です。ですので、まずは税金を支払うことが何よりも重要でしょう。

ただ、税金で一番苦しめられるものとして最もやっかいなものが消費税です。数ある税金の種類の中でも、個人事業者や法人でこの税金に苦しめられているところは山ほどあるでしょう。

消費税の問題は、支払う回数とその支払う仕組みにあります。

48万以上の消費税(地方消費税額は含みません)を支払うことになった場合は、年間2回にわけて支払う、いわゆる中間消費税が発生するのですが、資金計画をたてるうえで、この中間消費税をそもそもいれることを忘れがちです

また、消費税は、本来課税売上と呼ばれるものから課税仕入れを差し引いたものを納税します。(本則課税と呼ばれるものです)

難しそうですが、要は、お客様から預かった消費税と取引先などに支払った消費税の差額を納税する、これが事業者側の消費税の仕組みです。

この消費税を、預かった際に、納税準備預金として別段預金を作り、そちらに貯めていけばいいのですが、つい事業が苦しくなった時に、運転資金として使ってしまうのです。

そうなると、本来消費税を支払う時期になっても資金がないということで、銀行から借り入れをし、さらに税金を滞納しているという事で銀行の心証も悪くなり、最悪貸してもらえないか、貸してもらえても金利が高くなる可能性があります

そして延滞税までかかってしまい、この延滞税は罰金のようなものなので、経費にも参入が出来ない最悪な出費となってしまいます。

いかがでしょうか。いかに税金を真っ先に支払うことが重要であるかがわかってもらえたでしょうか。

保証人を用意する

審査を有利に進めるうえで、普段の人づきあいも大事になってきます。普段から人と全く関わらず、親さえも疎遠にしている人は、いざ銀行から融資をしてもらおうという際に、保証人を用意することが困難なことがあります。

これではいけません。

例え銀行から借りる借りない関係なしに事業をするのであれば、人との付き合いは大事にしないといけません。銀行側の人間からすると保証人は非常に重要なファクターになります。

万が一融資先が倒産し、貸し倒れが発生しても保証人でカバーできるのであれば、損失は最小限に抑えられるからです。

また、保証人が必要ない場合でも、保証人が用意できる環境にあるか、そういう人脈があるかどうかで、審査をする際の判断がかわってくる場合もあります。

どちらにせよ一番いいのは、保証人なしで借り入れができたらいいのですが、それが不可能な場合も多々あるでしょうから、普段からの人づきあいは大事にしておきましょう。

銀行員と綿密に打ち合わせをする

意外かもしれませんが、銀行員も人です。人という事は、好き嫌いがあるということです。書類だけのやり取りで済むのであれば、最終的にはAIとなり、人は必要なくなるでしょう。しかしその時代はもう少し先だと思いますので、まずは銀行員とのやりとりが必要になります。

その際、面倒くさく感じるかもしれませんが、何度もやりとりをし、綿密に打ち合わせを行ってください

そうすることで、銀行員と一緒に事業計画も策定できますし、親切な銀行員でしたら事業主からヒヤリングすることで、自ら作ってくれることもあります。

しかしそれも何度も打ち合わせをすることで、できることなので、より具体的な事業計画を策定するためにも銀行員とはできる限り親密な関係を築きましょう。

運転資金か設備資金で必要書類が異なる

単純な運転資金の場合と違い、設備資金では担保となるものについての担保価値について調べる必要があります。その際、例えば不動産を担保に事業資金を借りるのであれば、不動産の登記簿謄本や契約書などが必要になってきます。

登記簿謄本は、最寄りの法務局で取得できますし、郵送でも取得可能です。

契約書に関しましては、通常不動産を売買する時は仲介に入った不動産会社が売買契約書と重要事項説明書を売り手用と買い手用に同じものをそれぞれ1通ずつ作成しているので、必ず手元にあるはずです。

銀行で融資を受ける場合は、ほとんどが売買契約書の原本ではなく、売り手と買い手の署名捺印のあるページのコピーを提出すればOKです。袋とじの契約書だった場合は表紙部分のコピーが必要となることもあります。

契約書の表紙部分をコピーする際に気をつけたい点として、帯と表紙部分にまたがって取引当事者が押印している部分が確認できるようにコピーしましょう。

不動産ではなく動産を担保にする時も同じく契約書や領収証などが必要になります。

銀行融資を受けるときの手続き

事業者が銀行から融資を受ける際には、通常の個人と違い、様々な手続きが必要になります。

また、主な融資までの流れは下記のようになります。

銀行員との面談
融資申し込み
審査
決裁
契約
融資実行

銀行員との面談に関しては、まずは銀行の窓口にて、相談から始まるでしょう。

その際、具体的にいくら必要か、どうして必要か、そして返済はどのようにしていくかをおおまかでも構いませんので計画を作成してからいくと話はスムーズになります。

その後、融資申し込みの段階では捺印が必要になるので、ハンコは忘れないようにしておきましょう。

審査に関しては、早いときは2日から3日で出るときもありますが、1週間以上かかるときもあるので、資金が苦しくなりそうであれば、早めに銀行に相談に行くことをお勧めします。

決裁は、審査が無事合格したことを意味します。審査が通れば、あとは、契約書に署名捺印などをし、融資が実行されるといった流れになります。

まとめ

以上が、事業者が銀行からお金を借りる方法です。

いきなり銀行に行って、お金を貸してくれといっても、いくらなのか?なぜ必要なのか?返す当てはあるのか?相手の立場にたって考えればわかってくることもあるでしょう。少しでも銀行からお金を借りる際に、有利なように準備してから銀行に行かれることをオススメします。

また、銀行からお金を借りる前に、できることは多々あります。安易に借りるのではなく、本当に必要かどうか、十分に吟味することも大切です。

それでもどうしても必要であれば、事業を継続していくためにも、事業計画を作り、返済期間や返済金額を自分自身で考えながら、事業を継続していくことが、これからの事業者に求められることでしょう。