
電気事業法の改正により、2016年4月から電力の小売が全面的に自由化されます。
2016年1月から事前受付が本格化しています。インターネットで調べもの何かをしていると、ソフトバンクやauといった携帯会社の広告を目にしませんでしたか?それ以外には、現在契約している電力会社から営業の電話がかかってきたりと、あの手この手の顧客獲得合戦がすでに始まっています。
目次
電力の小売自由化は2000年3月からスタートしていた
電力の小売自由化は、実は2000年3月から始まっていました。といっても、この段階ではデパートやオフィスビル、官公庁施設、大型ショッピングセンター、大規模な工場といった特別高圧で受電して電気を使用しているところ限定でした。
その後、2004年4月・2005年4月には、スーパーやホテル、テナントビルといった中小規模の高圧区分へと対象が拡大されました。
そして、2016年4月1日からは、個人商店や一般家庭といった低圧区分にまで対象が拡大され、全面的に自由化されます。先述したように、2016年1月から事前受付を開始していて、新規で参入する企業から料金プランや内容が発表されています。
現段階で、参入が未定や検討中の企業もたくさんあります。
そういった企業が参入することにより、競争が生まれ、電気料金が下がったり、既存の電力会社にはなかったサービスの提供を受けることができるといったメリットも考えられます。
すでに自由化が行われている海外ではどうなのか
アメリカやヨーロッパなど、すでに電力の自由化を行なっている国があります。
電力小売自由化のタイミングや情勢などもことなるので、単純に比較することは難しいのですが、イメージをつかむという意味合いで参考にしてみてください。
アメリカ
電力の自由化は1990年代より、州単位で導入しています。一時期、全米の約半数の州が法律や規則の制定を行なっていたのですが、2000年頃にカリフォルニア州で起こった燃料費高騰などが原因で電気価格が急上昇してしまいました。
また、2003年には北米大停電が発生したことがきっかけで、電力の安定供給対策が強化されることになりました。
その後は、電力自由化を廃止、無期延期、大口受電者のみに限定したりする州が出始め、停滞しているのが現状です。
イギリス
1990年頃から段階的に電力自由化を進め、1999年になって一般家庭も含めた全面自由化が行われました。
イギリスの場合は、合併や買収などで攻勢を仕掛ける大手電力会社と独立系電力会社等が価格競争に加わったことで、さまざまな料金メニューが提供され、一般ユーザーが比較検討する土壌がしっかりと形成されていきました。
ただ、この価格競争が加熱したことで料金メニューが複雑化してしまい、選択が難しくなるという、日本の携帯電話市場のような状況になってしまいます。
電力自由化が導入されてから、料金は下がったのですが、最近では燃料費の高騰などの煽りを受けて上昇しているようです。
ドイツ
もともと、日本と同様に数社の大手電力会社が独占しているといった状況でしたが、1998年に電力小売りの全面自由化が実施されてから、大手電力会社同士の合併や新規参入事業者の参入によって電気料金は低下していきました。
ただ、それも一時的なもので燃料費の高騰などの影響で料金が上昇傾向になっています。
以上が、日本より先に電力小売りの全面自由化を行なった国の事例ですが、どの国も導入当初は上手い具合に競争が生まれて料金が低下したことが分かります。
しかし、近年は上昇傾向になっているというというのは少々気になる点ではあります。
これは、燃料費の高騰や天災などといった外的要因によるものでもあるので、これらの事例を日本にそのまま当てはめるというのも無理がある話だと思います。
これらの点については、あくまでも参考にする程度にしておくのがいいかもしれません。
電力自由化にまつわる疑問
いよいよ、全面的に電力小売りの自由化が始まるわけですが、申込みや手続きなど、いろいろと疑問が出てくるのではないでしょうか。
ここでは、代表的なものを挙げて見たいと思います。
電力は安定して供給されるの?
発電所から各家庭までをつないでいる送電線や配電線の管理等は、安定供給の観点から電力自由化後も今まで同様、東京電力や関西電力といった政府が許可した企業が行います。
ですので、どの業者から電気を購入するとしても送配電部分は従来の企業が管理しますので、電気の質が業者によって変わったり、安定供給ができないといったことはありません。
賃貸住宅でも切り替えができるの?
電力会社との契約名義が本人であれば原則可能です。ただ、契約名義が大家さん等になっている場合は確認が必要になります。
分譲マンションでも切り替えできるの?
賃貸住宅の場合と同様で、各部屋ごとに個別で契約している場合であれば切り替えは可能です。
ただ、マンションによっては管理組合が電力会社と一括契約をしているケースがあります。その場合は管理組合を通じての切り替えになる可能性がありますのでご注意ください。
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契約した会社(小売業者)が倒産や撤退したらどうなるの?
この場合、すぐに電気の供給がストップするといったことはありません。
送配電部分を地域の電力会社が担っているので、新たな供給先が見つかるまでは、そこ(東京電力や関西電力など)から供給を受けるという形になります。
切り替えには工事や費用が必要なの?
電気メーターが従来のものを使用しているのであれば、スマートメーターへの交換する工事が必要となります。
原則、スマートメーターへの交換には費用はかかりませんが、工事内容によって費用が発生する場合もありますので、電力会社の切り替えを行う際にはよく確認しておいてください。
なお、交換作業をするにあたり、電気が15分程度停まることもあるようなので、併せて確認しておくのがいいでしょう。
※スマートメータ:通信機能を持った電気メーターで、検診を遠隔で行うことができ、30分毎の使用料を計測できるようになっています。
2016年4月1日までに何もしなかった場合はどうなるの?
現在、契約している電力会社から今までどおり電気を購入する形になります。
今回の電力自由化に伴い、地域の電力会社も新プラン導入や既存プランの廃止や変更を行なうので、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。
その他の内容に関しては、電力取引の監視等を行う、経済産業大臣直属の組織「電力取引監視等委員会」のサイトに詳しく書いてありますので、そちらをご覧ください。
電力取引監視等委員会 公式サイト
「電力小売全面自由化に関するよくあるご質問」
電力会社を変更した方がお得なの?
現段階で、参入を検討中の事業者もあるので、今後、新規参入事業者が増えてくれば基本料金等が下がる可能性も十分考えられます。
海外の例でもあるのですが、ガス会社がガスと電気をセットにして割引契約するといったメニューがあったりします。
日本でも、色々なタイプのセット割引メニューが各事業者から提供されると思いますので、電気料金はあまり下がらないけど、トータルで見たら家計的に助かるといったことも考えられます。ですので、慌てずに各事業者が提示する料金メニューを吟味して決めた方が、よりお得になるのではないでしょうか。
このセット割引でわかりやすい例を挙げておきます。
auでんき
出典:KDDI公式サイト
auでんきの特徴は、現在の電気料金と同じ設定で、auスマホ等とセットにすると、1ヶ月あたりの電気料金に応じて最大5%のキャッシュバックを行うという点です。
出典:KDDI公式サイト
キャッシュバック率は以下のようになっています。
5,000円未満 → 1%
5,000円以上8,000円未満 → 3%
8,000円以上 → 5%
関西電力エリアの方で、かつauユーザーの方が2016年5月31日までに申込みをした場合
8,000円以上 → 12%
このキャッシュバックはau WALLET プリペイドカードにされるので、プリペイドカードを契約している方が対象となります。
ソフトバンクでんき
出典:ソフトバンク公式サイト
ソフトバンクでんきの特徴は、「でんき+スマホ・ケータイ+ネット」をソフトバンクにまとめると「おうち割」というセット契約があります。
このセットにすると、スマホ代が「スマホ・ケータイ+ネット(光セット)」で毎月最大2,000円の割引(1人あたり・2年間)され、「スマホ・ケータイ+でんき」で毎月200円の割引(1世帯あたり・2年間)という内容になっています。
出典:ソフトバンク公式サイト
例えば、3人家族だった場合で計算してみると…
2,000円✕3人+200円=6,200円
毎月最大で6,200円の割引きされるということになり、年間になると148,800円得になるという計算になります。
ただ、現段階では東京電力、中部電力、関西電力のエリアでしか申込みができません。その他のエリアについては順次エリアを拡大するそうです。
東京ガス
出典:東京ガス公式サイト
東京ガスを利用している方が電気とガスをセットで契約すると、基本料金が月250円が割引されます。また「ずっとも電気1」+「ガス・電気セット割」の契約をすると電気代が年間約8,500円得になるメニューもあります。
出典:東京ガス公式サイト
さらに、「東京ガストリプル割」というメニューでは「ガス・電気・インターネット」の3つをまとめるとさらに得になるメニューもあります。
出典:東京ガス公式サイト
割引単価や適用期間はプロバイダによって異なりますが、年間で約20,500円もお得になります。
※「OCN光 東京ガス電力セット加入キャンペーン」の場合なら適用期間36ヶ月
今回、3つの事業者を例に挙げましたが、その他の事業者もさまざまな内容のメニューを用意していますので、いろいろ調べると、さらにお得なものが見つかるかもしれません。
東京電力
※ここからは追記です
エリアが限定されるのですが、もうひとつオススメの事業者を挙げるのなら「東京電力」です。
2016年4月からスタートした電力小売自由化に合わせて、東京電力も新プランを提供していますが、電気使用量が多い家庭ではそれなりにメリットが出るのですが、逆に使用料が少ない家庭であればあまり「お得感」がないのでは…といった内容になっています。
ただ、これはあくまでも東京電力管内での話です。
実は、東京電力は関西エリアへも進出しており、そこで提供されている料金プランが非常に魅力的なものになっているんです。
特に電気の使用量が多い家庭であれば東京電力のプランのメリットが享受できるようになっています。
使用電力量401kWh以上の単価が、関西電力の従量電灯Aの単価と比較すると約26%も安く設定されています。
また、東京電力はソフトバンクへ電力を供給している兼ね合いもあり、ソフトバンク経由で申し込みをすればスマホ代もしくはネット代が2年間で最大7200円が割引きされます。(ソフトバンク おうち割 でんきセット)。
このように、関西エリアであれば東京電力単体のプランでもメリットがありますが、さらにソフトバンクユーザーであれば、よりお得になるといったものになります。
関西電力管内にお住いでソフトバンクユーザーの方はぜひ検討してみてください。